点ではなく面でのサポート

今日は、企業の中での私の働き方について。

先日、今年の4月から支援させて頂いている企業で、社員の方のメンタル不調の案件が発生。その対応をさせて頂きました。

もともとその企業と出会ったのは、去年、私が県内の中小企業に送ったダイレクトメールがきっかけ。

一斉に送った翌日にお問い合わせの電話を頂き、反応の速さにびっくりしたのを覚えています。

その企業は従業員数100人前後の職場で、非常にエネルギッシュで元気の良い職場。正直、こんなに健康的な企業なのに、なぜメンタルヘルスサービスに興味を持たれたのだろう?と不思議に思いました。

こちらの企業、近年従業員数が徐々に増加。
全国に支店をお持ちだけれども、人事担当者は本社に1人だけ。


「病気もですけど、コミュニケーションの問題ってどこでもあるじゃないですか。やっぱり人が多くなると、いろいろあるかと思って。」
「メンタル的な問題も、あって当たり前と思うんです。だから、いざという時に専門的な支援がほしいなと思って。」
と30代の人事担当者。

これは他の組織でも感じますが、若い世代は、メンタルヘルスに自然な興味・関心を持って下さるなあと。

予防的観点。
そして、精神的な疾患は誰でもどこでもあるものという認識。
メンタルの問題に、非常に開かれた態度。

何かあってから手を打つ企業が多い中、先行投資・今後の保険として私を使おうと判断してくださったこと。未来を見据えたこの企業・人事担当者の姿勢に、感銘を受けました。

が、特に目の前に立ちはだかる喫緊の課題がないこちらの企業で、私は何を提供できるのか。

ヒアリングと担当者との話し合いの結果、今後、メンタルヘルス上の課題がでてきた時のためのセーフティーネット作りを提案しました。
具体的には、現場責任者との顔つなぎ・関係づくりの面談です。

そもそも、その組織を支援するには、現場の方々からのヒアリングが一番効率良く、その組織の特性が見えます。また、現場を知らなければ、私も組織で適切に判断・行動できません。

また「何かあったら相談してくださいね」と社内アナウンスしても、よく知らない他人に相談できるはずもなく。まずは社内のキーパーソンに「初めまして」とご挨拶しつつ、私を「人として」知って頂くことが基本と考えています。

私たち心理職は、とかく対個人の支援、つまりカウンセリングや心理療法をイメージしがちですが、産業領域における心理職は、対集団支援も重要な仕事。メンタルヘルス対策を念頭においた環境・関係づくりも同じくらい大切に扱います。

むしろ個別対応で動く前の「仕込み(関係づくり)」が重要!なのです。

具体的には「問題を抱えた人」だけが面談対象ではなく、社員を支援する立場にある「問題はない人(上司・管理職など)」と、何もないうちからつながっておくことが意外と大事だったりします。

企業に入って、私たちが直接不調の人と面談する対症療法だけでは、結局、対応は後手にまわり、ご本人に出会ったときには、より複雑な・重篤な状態になっていることも。

現場の上司や管理職、人事担当者がいかに早く気づいて、こちらと連携して頂けるか。普段の種まき(=顔を売ってナナメの関係作り)も、大切な仕事の一つです。

予防的観点だけでなく、いざという時の緊急対応・その後の支援でも、このナナメの関係が役に立ちます。

私という「点」でケアするより、同僚・上司・人事担当者らから成る組織という「面」でサポートできる体制のほうが、結果的に支援する側・される側の負担を軽減します。

また、この面でのサポートは、誰かがどこかで何かあった時にキャッチできる、セーフティーネットの役目も果たします。

今回こちらの企業でも、プライベートな悩みから心身の不調をきたした社員さんに支店長が気づき、本社の人事担当者を通じて私と面談へ。

この支店長さんとは、この春にZOOMで個別面談をして、コミュニケーションが取れていた方でした。

今は、その支社長さんだけの「点のケア」から人事担当者・私を含めた3人での連携「面のケア」に切り替え、その社員さんの今後の支援体制を作り始めています。

先日の打ち合わせで、人事担当者が「こういう体制を作っていてよかった」とほっとした様子でお話された姿に、私は心の中でこっそりガッツポーズ!

タテ・ヨコだけでなく、ナナメの関係。
点ではなく、面でのサポート。

こういう組織づくりを、求める企業・社内担当者と共に作り、
広げていきたいと思います。

企業の数だけ、いろいろな形の支援があります。
お困りごとがあれば、どうぞお気軽にお問合せください。

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