開業心理師として思うこと

「当時の自分は助けを求めるべき状況だったと気づきました。でも、助けを求める発想もなかったです。自分がされていることが虐待だと気づいていたら何か変わっていたと思います。」

上記の言葉は、2018年3月に滋賀県で起きた母殺害で逮捕・起訴された長女が、接見した記者から「事件を起こさないためにはどうしていたら良かったと思いますか?」の問いに答えた言葉です。

この記事を読んだ時、やりきれない思いでいっぱいになりました。なぜ、誰の手も声も彼女に届かなかったのか。

真っ先に思い浮かんだのは、こうした方が助けを求められる場所が必要だということ。そしてそれは、病気でなければ行けない(と思われがちな)病院以外の、公的機関の相談窓口や私たちのような開業心理師(士)の役目でもあるということ。

病気でもなく、でも生きていくことが苦しい方々が、自分を見失わずに自分らしく生きていくことを安心・安全に考える・選択する場所が、大人になってからこそ必要です。

昨今、児童虐待の意識が高まり、社会的にも・法的にも虐待から子どもを守る仕組みがどんどん強化されていますが、成人になるとそのセーフティーネットは手薄になります。

自分の身は自分で守れる。
困った時に自分で相談できるのが大人。

ということなのでしょうが、そうした傷を抱えた方々はそもそも人を頼ることができず、また頼れる先が子どもの時ほど社会に準備されていないのが現状です。

私は、働いている人を対象としてカウンセリングや高ストレス者の面談などをしていますが、その中に、仕事場でのストレスもさることながら、背景に親子関係の問題を抱えている方が少なくありません。夫婦関係の問題も、紐解くと、その方自身の親子・家族関係が影を落としていると感じることも。

そうした生きづらさを抱える方々が、安心安全に自分を語る場としてカウンセリングを受ける文化がもっと広がり、そしてその場所が増えてほしいと思っています。

開業心理師として、そういう方々の一窓口として、私も活動し続けたいと思います。

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