孤独と希望

今日は、非常勤で働かせて頂いている精神科クリニックの勤務日でした。そちらでは、外来での仕事(心理検査やカウンセリング)と併設されているリワーク(=復職支援)施設のメンバーへの集団認知療法を担当させて頂いています。

復職支援施設、リワークという場所をご存知でしょうか?

リワークは、主にうつ病やストレス関連障害で職場を休職された方が、職場に復帰される前に、仮の会社として通って、会社生活に向けたリハビリをして頂く場所です。ここでは、患者さんをメンバーさんと呼び、個人作業や集団での作業・話し合いなどを通じて、会社での生活に向け、ウォーミングアップを行います。

3か月以上のやや長い休職期間を経ると、個人で、自宅療養だけでは、就労に必要な体力・気力・集中力の回復が不十分なケースが多々あります。やはり「集団で過ごすこと」「働くこと」「コミュニケーションをとること」を予行練習しておくことが、復職後のしんどいながらも安定した生活を支える基盤となってくると実感しています。

実は、私はこちらのスタッフとして勤務し、休職された方々の復職までの支援をしていました。その中で、この集団認知療法はスタッフが持ち回りで担当していましたが、退職を機に、私が担当するプログラムとして、週1回30分の枠を持たせて頂くことになりました。

今日は、新しく2名の方が参加され、自己紹介をさせて頂きました。

ホワイトボードの前に立って、「昨年4月までこちらで働いていて…」と自己紹介していた時、ふと「本当に私はここから出発したんだなあ」と改めて実感しました。

「復職した人たちが、長く安定して働き続けられるように、ここを出た後こそ、会社の中でこそサポートがいる!」というただその想い一つで、去年の今頃退職希望を伝え、春にここを飛び出したのです。

心理士の常勤職、なかなかないよ。
なんのつても無いのに、起業?

いろいろなお声を頂きました。私も正直、悩みました。
4年間、悩み続けました。

でも諦められなくて、結局、起業する道を選びました。

未だに、時々途方にくれることがあります。本当に私の支援を求めている人・場所があるのかと。

いつもスタッフ3人で肩を寄せ合いながら、一緒に悩みながら、メンバーさんを支えていた日々とは全く違う、孤独と緊張。

でも目の前に、「一緒にやってほしい」という会社が現れ、人事担当者と話を重ねる時、やっぱり起業してよかった!と思います。その企業ならではのニーズにそったプランを一緒に考えている時、やはりワクワクするのです。

精神的な不調を抱えていても、一緒に働ける環境づくり。
休職や退職に至らず、大切な人材を守る仕組みづくり。
いつでも、誰でも安心して働き続けられる組織に。

私が目指す方向に、同じ思いで進もうとしてくれる会社・人がいらっしゃることに、私はとても希望を感じています。

今、休職中の方。これから復職される方。

間違いなく、不安だと思います。孤独を感じておられると思います。

そういう方々が、安心して戻れる場所と人(サポーター)をもっと増やしていきたい。

戻る先に、いつでも安心して働ける環境と、その環境を支える人もいるように。そして復職者だけでなく、メンタル不調に陥った方々や彼らを支える人事担当者も、必要な時に専門的な支援を得られるように。働きたいと願うその大事な人材が、そこを去らずに働き続けられるように。

これが私が目指すビジョンでの一つです。

今日、メンバーさんの前に立ちながら、大海原に漕ぎ出した小さなボートに乗る自分を想像していました。

ここのメンバーのみなさんと支援を求めてくれる会社、そしてまだ出会えていない多くの人のもとへたどりつくために、孤独と希望を心のポケットに携えて、私はこれからもオールをこぎ続けようと思います。


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